コーヒーの歴史と伝説

コーヒーの起源にまつわる伝説と面白エピソード

普段何気なく飲んでいるコーヒー。いったいどこで、だれが、煎った豆をすりつぶして抽出して飲むなんて面倒なことを考えたんだろう?そのへんの歴史と伝説をお話しましょう。

始まりはエチオピアのヤギ?イスラムの僧侶?

コーヒーの起源については以下の二つの説が伝承として伝えられています。

  • エチオピアのカルディという名前のヤギ飼いの少年が、山中でコーヒーを食べたヤギが興奮状態になることに気づいたことから発見したという説。
  • オマルという名前のイスラム神秘主義の修道者(デルウィーシュ)が、追放されて迷い込んだ山中で鳥に導かれて見つけたという説。

ただしこれらは後世に考えられたという説もあり、その実際の起源は明らかではないんです。しかしながら、紀元前には既にエチオピアではコーヒーの実を潰して丸めて携帯食としていたとも伝えられています。当時は実をそのまま食用としていたそうです。初期には、このような食用の他に生の実や豆の煮汁として飲まれていたと伝えられていて、ここまでは正確に文献で見ることが出来るんです。しかし、いつ頃から今日のように焙煎した豆を用いるようになったかは結局のところ不明。焙煎器具が発掘された年代から、遅くとも13世紀には焙煎が行われていたと考えられているそうです。

ちなみに、すでにご存知の方も居るかと思いますが、大手コーヒーショップ(と言うより最近は輸入食材店として有名ですが)の「KARDI(カルディ)」は、前者の伝説になぞらえて、最初のコーヒー発見者とされるヤギ使いの少年の名を用いて屋号を決めたそうですよ。

もともとは「麻薬」扱い?コーランで禁止された禁断の飲み物

今でこそ子供でも知っている「コーヒーを飲むと眠れなくなる」というカフェインの作用。6世紀から8世紀頃にエチオピアからアラビア半島のアラブ人に伝わり、彼らを通して中東・イスラム世界の全域に広まった当初は、もちろん誰もそんなことは知らず、人の眠りを強制的に妨げる悪魔の実として、「コーラン」(イスラム教の経典)の教えからの逸脱であるとみなし、一時コーヒーを禁止する動きがあったそうです。

ま、これはアメリカで前世紀に行われた禁酒法しかり、すでに市民の間に広く広まってしまっていたコーヒーすべてを排斥することは出来ず、また、麻薬やアルコールにくらべたいした実害もなかったことから1454年にイスラムの法学者ジャマールッディーンがイスラム法学上の見解で合法と判断して以来、数十年にわたる論争を経つつ、やがて飲用しても構わないという見解が主流となってコーヒーは中東圏に広まっていったらしいです。

その後、ようやく13世紀になって、メッカ巡礼者が宗教儀礼に用いるために密かに自国に持ち帰り、イスラム圏全域で本格的な栽培が開始され、1600年にはインド西部にも苗木が伝えられた。17世紀頃のヨーロッパでの流行によって、ヨーロッパ諸国が植民地でのコーヒー栽培にも取り組みはじめた。1658年にはオランダがセイロンでの少量栽培に初めて成功し、1700年にはジャワでの大量栽培に成功した。1723年、フランスの海兵隊士官のド・クリューがフランス領西インド諸島に苗木を持ち込み、少量の栽培に成功。これが南米のコーヒーノキの起源になった。ブラジルには1727年にフランス領ギアナで試験栽培されていた苗木が密かに持ち込まれて栽培されたのが最初とされています。